この記事の目次
インフラ・運用の場合
インフラ構築や運用保守をメインで担当する場合のガイドです。
インフラ・運用とは
役割の概要
開発者が作ったアプリケーションを、安定して動かし続けるための仕事です。
flowchart LR
A[開発] --> B[インフラ構築]
B --> C[リリース]
C --> D[運用・監視]
D --> E{障害発生?}
E -->|Yes| F[障害対応]
F --> D
E -->|No| D
主な業務
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| インフラ構築 | サーバー、ネットワーク、DB等の環境構築 |
| リリース作業 | 新しいバージョンのデプロイ |
| 監視 | システムの稼働状況を監視 |
| 障害対応 | 問題発生時の対応と復旧 |
| 手順書作成 | 作業手順のドキュメント化 |
| キャパシティ管理 | リソース使用状況の把握と計画 |
よくある1日の流れ
flowchart LR
A[9:00<br>朝会] --> B[9:30<br>監視確認]
B --> C[10:00<br>作業]
C --> D[12:00<br>昼休み]
D --> E[13:00<br>作業続き]
E --> F[16:00<br>報告・記録]
F --> G[18:00<br>退勤]
タイムスケジュール例(運用チーム)
| 時間 | 活動 | 詳細 |
|---|---|---|
| 9:00 | 朝会 | 昨日の障害、今日の作業予定を共有 |
| 9:30 | 監視確認 | アラート状況、システム稼働状況の確認 |
| 10:00 | 定常作業 | リリース作業、手順書作成、構築作業など |
| 12:00 | 昼休み | - |
| 13:00 | 作業続き | 午前の続き、または障害対応 |
| 15:00 | 確認・テスト | 作業結果の確認、動作テスト |
| 16:00 | 報告・記録 | 作業報告、ドキュメント更新 |
| 17:00 | 引き継ぎ | 次のシフトへの引き継ぎ(シフト制の場合) |
| 18:00 | 退勤 | - |
ポイント:インフラ・運用は予期せぬ障害で予定が変わることがあります。「優先順位をつけて動く」「記録を残す」習慣が大切です。
障害発生時の1日(例)
flowchart TB
A[10:30 アラート検知] --> B[10:35 状況確認]
B --> C[10:40 上司に報告]
C --> D[10:45 一次対応開始]
D --> E[11:30 復旧確認]
E --> F[12:00 報告書作成]
F --> G[午後: 再発防止策検討]
最初の1ヶ月で覚えること
第1週:環境と業務を理解
| やること | 完了の目安 |
|---|---|
| システム構成の把握 | 構成図を見て主要なサーバーが分かる |
| 監視ツールの確認 | 監視画面にログインして見方を理解 |
| 手順書の場所把握 | 必要な手順書がどこにあるか分かる |
| 連絡体制の確認 | 誰に何を報告するか把握 |
第2週:Linuxとツールの基礎
| やること | 完了の目安 |
|---|---|
| サーバーへの接続 | SSHでサーバーに接続できる |
| 基本コマンドの習得 | ls、cd、cat、grep、tailが使える |
| ログの確認 | アプリケーションログを見つけて確認できる |
| 監視の意味理解 | 各監視項目が何を意味するか分かる |
第3〜4週:実務を経験
| やること | 完了の目安 |
|---|---|
| 簡単な作業を実施 | 先輩の監督のもと、手順書に沿って作業完了 |
| 作業記録を書く | 作業内容を正確に記録できる |
| 障害対応を見学 | 障害発生時の動きを観察 |
1ヶ月後の目標状態
flowchart TB
A[1ヶ月後の目標] --> B[システム構成を説明できる]
A --> C[サーバーに接続してログを確認できる]
A --> D[手順書に沿って作業できる]
A --> E[障害発生時に何をすべきか分かる]
この経験で身につくスキル
技術スキル
| スキル | 説明 |
|---|---|
| システム全体の理解 | アプリ、DB、ネットワークがどう連携するか |
| トラブルシューティング | 問題の原因を特定する力 |
| 安定稼働の設計思想 | 「壊れない」「壊れても復旧できる」設計 |
| 自動化の発想 | 手作業を減らし、ミスを防ぐ |
| ドキュメント力 | 誰でも作業できる手順書を書く力 |
| Linux/ネットワークスキル | サーバー操作、ネットワーク構成の理解 |
ビジネススキル
| スキル | 説明 |
|---|---|
| 冷静さ | 障害時でも落ち着いて対応する力 |
| 報告力 | 状況を正確に伝える力 |
| 責任感 | システムを「止めない」という使命感 |
| 計画性 | 作業を確実に遂行する力 |
目指せる人材像
| 人材像 | 説明 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 一人前の運用エンジニア | 定常作業を一人で実施できる | 1〜2年 |
| インフラエンジニア | 構築から運用まで担当 | 2〜4年 |
| SRE/クラウドエンジニア | 自動化・クラウド基盤の設計 | 4年〜 |
インフラ・運用は「縁の下の力持ち」:普段は目立たないですが、システムが安定して動いているのはインフラ・運用のおかげです。この経験があると、開発者になっても「運用しやすいコード」が書けるようになります。
成長を感じられるポイント
3ヶ月後
- [ ] システム構成図を見て、主要なサーバーを説明できる
- [ ] 手順書に沿って一人で作業できる
- [ ] 障害発生時に「何を確認すべきか」が分かる
6ヶ月後
- [ ] ログを見て問題の原因を推測できる
- [ ] 簡単な手順書を自分で書ける
- [ ] 障害対応の一次切り分けができる
1年後
- [ ] 複雑な作業も任せてもらえる
- [ ] 監視アラートの意味と対処法が分かる
- [ ] 障害対応で後輩にアドバイスできる
成長のサイン:「以前は意味不明だったログが読めるようになった」「障害発生時に慌てなくなった」と感じたら成長の証です。
「開発じゃないから成長できない」は誤解
開発者が知らないこと
インフラ・運用の経験者は、開発者が見落としがちな視点を持っています。
- 本番環境の厳しさ(テスト環境と違う)
- 障害対応のリアル(深夜対応、プレッシャー)
- 運用を考えた設計の重要性
- 「動けばOK」ではなく「安定して動き続ける」
最初に学ぶべきこと
1. Linuxの基本操作
ほとんどのサーバーはLinuxです。
最低限覚えるコマンド
| コマンド | 用途 |
|---|---|
ls |
ファイル一覧 |
cd |
ディレクトリ移動 |
cat / less |
ファイル内容表示 |
grep |
文字列検索 |
tail -f |
ログをリアルタイム表示 |
ps |
プロセス一覧 |
top / htop |
リソース使用状況 |
df |
ディスク使用量 |
free |
メモリ使用量 |
ログの確認方法
# 最新のログを表示
tail -100 /var/log/application.log
# リアルタイムで追跡
tail -f /var/log/application.log
# 特定のキーワードを検索
grep "ERROR" /var/log/application.log
# 組み合わせ
tail -f /var/log/application.log | grep "ERROR"
2. ネットワークの基礎
flowchart LR
A[ユーザー] --> B[ロードバランサー]
B --> C[Webサーバー1]
B --> D[Webサーバー2]
C --> E[DBサーバー]
D --> E
覚えておくべき用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| IPアドレス | 機器の住所 |
| ポート番号 | サービスの入り口(80=HTTP, 443=HTTPS) |
| DNS | ドメイン名をIPアドレスに変換 |
| ファイアウォール | 通信の許可/拒否を制御 |
| ロードバランサー | 負荷を分散する |
3. 監視の基本
何を監視するか
| 対象 | 監視内容 | 例 |
|---|---|---|
| サーバー | CPU、メモリ、ディスク | CPU使用率80%超え |
| アプリ | 応答時間、エラー率 | 応答時間3秒超え |
| プロセス | 起動状態 | Webサーバー停止 |
| ログ | エラーメッセージ | Exception発生 |
アラートが来たら
- まず状況を確認
- 影響範囲を把握
- 一次対応(できる範囲で)
- 上位者に報告
- 記録を残す
障害対応の進め方
障害発生時のフロー
flowchart TB
A[アラート検知] --> B[状況確認]
B --> C[影響範囲の特定]
C --> D[エスカレーション判断]
D --> E[一次対応]
E --> F[復旧確認]
F --> G[記録・報告]
1年目にできること
| やるべきこと | やらないこと |
|---|---|
| 状況を正確に把握 | 勝手に判断して操作 |
| 影響範囲を確認 | 慌てて誤操作 |
| 先輩・上司に報告 | 情報を隠す |
| 記録を取る | 記憶だけに頼る |
報告のポイント
## 障害報告
### いつ
2024/01/15 10:30 検知
### 何が
Webサーバー1号機のCPU使用率が100%
### 影響
サイトの応答が遅い状態
### 現在の状況
- Webサーバー2号機は正常
- 原因調査中
### 対応状況
- 10:35 〇〇さんに報告済み
- 10:40 ログ確認中
手順書の読み方・書き方
手順書の重要性
インフラ・運用では手順書通りに作業することが基本です。
- ミスを防ぐ
- 誰がやっても同じ結果になる
- 問題があれば手順書を改善
手順書を読むときの注意
- 作業前に全体を読む(途中で「あれ?」とならないように)
- 前提条件を確認(環境、権限、事前準備)
- 確認ポイントを把握(どこで何を確認するか)
- ロールバック手順を確認(失敗したときの戻し方)
手順書を書くときのコツ
良い手順書の特徴
## 手順1:サービス停止
### 目的
アップデート作業のためサービスを停止する
### 実行コマンド
```bash
sudo systemctl stop application
確認方法
sudo systemctl status application
# 「Active: inactive」と表示されればOK
期待結果
- サービスが停止していること
- 「inactive」と表示されること
注意事項
- 停止前に利用者への告知が完了していること
よくある失敗と対策
| 失敗 | 対策 |
|---|---|
| 本番と検証環境を間違える | 作業前に環境を必ず確認 |
| 手順書を読まずに作業 | 必ず事前に全体を読む |
| 障害時にパニック | 手順に従い、一人で抱え込まない |
| 記録を残さない | 作業ログを必ず残す |
| 「動いているからOK」 | 監視・確認まで完了させる |
学習のステップ
ステップ1:今の環境を理解する
- 自社のシステム構成を把握
- どこに何のサーバーがあるか
- どんな監視をしているか
ステップ2:基礎スキルを身につける
- Linuxコマンド
- ネットワークの基礎
- シェルスクリプトの基礎
ステップ3:自動化を学ぶ
- シェルスクリプトで定型作業を自動化
- 構成管理ツール(Ansible等)
- CI/CDの基礎
ステップ4:クラウドを学ぶ
- AWS / Azure / GCPの基礎
- Infrastructure as Code(IaC)
- コンテナ(Docker、Kubernetes)
キャリアパス
インフラ・運用からのキャリアは多様です。
flowchart TB
A[インフラ・運用] --> B[SRE]
A --> C[クラウドエンジニア]
A --> D[セキュリティエンジニア]
A --> E[DevOpsエンジニア]
A --> F[インフラアーキテクト]
| キャリア | 説明 |
|---|---|
| SRE | 信頼性を工学的に追求 |
| クラウドエンジニア | クラウド環境の設計・構築 |
| セキュリティエンジニア | セキュリティ専門 |
| DevOpsエンジニア | 開発と運用の橋渡し |
| インフラアーキテクト | インフラ全体の設計 |
まとめ
インフラ・運用で大切なこと:
- 手順書を守る(勝手な判断をしない)
- 記録を残す(作業ログ、障害記録)
- 報告・相談を早く(特に障害時)
- システム全体を理解する(開発者より広い視野を持てる)
- 「安定して動き続ける」ことの価値を理解する
インフラ・運用の経験は、エンジニアとしての土台になります。「開発じゃないから」と卑下せず、自信を持って取り組んでください。